思いの外、早く終わってしまった。プレイ時間は10時間といったところか。
恋愛ゲームのような明るい感じのOPソングであり、とてもじゃないが陵辱なシーン(渡会泉と繋がるルート以外では殆どがそれ)のあるゲームだとは思わなかった。
ノベルゲームだから心理描写や癖のある学君の心情が火を見るより明白となり、とても読み応えのある構成だった。

だが、実際にOPをよく見ると、九条理紗のスカートに血みたいな斑点がある。
破瓜行為によるものか、これから始まる猟奇行為を示すのか。
「CARNIVAL」に関してはOPに騙されてしまうかもしれないが、DL版以外で購入することは事実上不可能だから、ある程度、前情報を知っている人が多いと思われるので、狂気や鬱というジャンルのゲームとして名高い。
信じ抜く事の難しさは、志村詠美や理紗が受けた仕打ちや泉に対する木村学の移ろいゆく態度を見ても明白となった。
詠美、九条香織や高杉百恵が受けた陵辱シーンや志村麻里に対する性的暴行のシーンでは、まるで学が嬉々として行為をするように描かれており、個人的にそれが反って学の抱えている心の闇、ならびに心の叫びが聞こえてくる気がした。
【あらすじ】
マナブ(主人公)は、昔から嫌なことがあると、その記憶を失ってしまう不思議な性質を持った少年。
そんな彼は、典型的なイジメられっこで、学校でも先輩のエイミとミサワから執拗なイジメを受けていた。
ある日、いつものように学校の屋上に呼び出されたマナブは、そこで彼へのイジメを抗議するリサの姿があった。
リサの言動に逆上したミサワが、彼女に掴みかかった瞬間、マナブの記憶が途切れ、気付いたときには、
ミサワは首を掻っ切られ血の海に横たわり、リサは着衣を乱した格好で、意識を失い倒れていた。
記憶を失っているマナブは、曖昧な供述しか出来ず、事件の容疑者として警察に逮捕されるが……。

SCENARIO 1
この章では、学と武は友人であった。だが、なぜか武が突如として消えていってしまう、という学の身に起こる謎の提起から始まり、理紗との深めたり浅くしたりといった右とも左ともいえない微妙な関係や母親の亡くなった理由は事故死だという見解がなされていたようだが、これは本当に亡くなったのか、と疑問視させる。
さっそく、何の知識のない麻里をヤりたい放題
泉ルートについて、武という存在が実在する人物だと思い込んだ挙句、学と武は別々の意志を持った人間と結論付け、理紗ではなく泉と警官から逃避を選んだ。
泉も複雑な家庭環境であり、諦めや刺激的な境遇に行きたいと願う気持ちが彼女の心にある原因は、親からの愛情不足すなわちネグレクトによるものではないか、と思った。
また、適切な愛情を子供に与えない家庭の場合、叱ったりするときだけが親と交流手段であり、年を重ねるに従って、親の身体が弱くなるに従い今度は過干渉タイプになり得る。
ただ、これは、かなり辛いものがある。
インプリンティング(刷り込み)では、幼少期における短い期間での虐待行為あるいは、愛情行為の影響を考えたときに、その後の人生に多大な影響を与える、という学説があることからも言える。
いじめっ子にいじめられていた人が偶然、数年後に2人が街で鉢合わせになったときに、そのいじめっ子が反省して「もうあんなことはしないから許してくれませんか?友達に戻ってくれませんか?」と声をかけてきたときの心境と似たり寄ったりな気がしてくる。
許す気にはならないし、もっと言うと今すぐこの場から離れていってほしい、というのが本音だろう。
仮に、もうそのいじめっ子のことを許せていたとしても、何を話して良いか分からなくなって気まずい空気だけがその場を支配する。
そんなことになるのは容易に理解できる。

だからこそ、携帯電話を投げたという行為には親からの別離ひいては親に対しての復讐といった意味で連絡を取らないという強行手段をとってみせた。
またこの2人は意気投合しているシーンがあった。

「静けさや磐にしみいる蝉の声」
松尾芭蕉の句
「何か話でもすればよいのであるが、話すべき材料は何も持たぬから
ただ手持ち無沙汰で坐っている、んです」
「でも、新聞を読ませようとすれば、ふり仮名のない新聞くらい読めるでしょう?」
「あ、よく解ったのね!」
「うん、まあ、日頃書などすさめぬ人も長き病の床には好みて小説伝記を読み、
あるはてにはの合わぬ歌発句をひねくりなどするものなり、ってところだよ。
ただそれだけ。僕は発句はしないけど。病床六尺」
『病床六尺』 正岡子規「生まれいずる悩み」
『生まれいずる悩み』 有島武郎
こういう機知に富んだ内容を喋りたいのだが、いかんせん、教養と知能が無いものでうまく言葉が出ずに結果的に引っ込み思案になってしまう……。
SCENARIO 2
この章では、武視点で物語が進行していく。
あの幼馴染ともいえるほどの武は自身が生み出した解離性同一障害という病気からくる妄想なのであった。妄想という表現が正しいのかはさておき、学の考えではあるものの実行に移すことができない、そんな状況の時に当然のように現れてくるのである。
強烈な味方でもあるし、別の見方をすれば、自分の人生は自分で決めるという選択の自由を奪い去られるような気もした。
理紗の家庭も崩壊しており、父親から性的虐待を受けていたと語っており、実の父親から受ける仕打ちに目も当てられない気持ちになった。
そういう関係性の元で2人は公園にて出会う。
SCENARID 1では一方的な暴力を受けていた学は、理紗が暴力を止めてくれたというシーンがあったのだが、SCENARID 2では暴力を受けて、やり返したのは武であり、理紗が暴力をやめさせたわけではない。
そして、物語はさらにダークなものに変化する。
実の父に処女を奪われてしまったのだ。
そのことを知った武は、もはや自分がいると学にも支障が出るので、武という人格は消えていく。
SCENARIO 3
この章では、理紗視点で物語が進行し、フィナーレを飾る。
所謂、家族で身体的な虐待行為、それもあんまり誰にも分らないように仕込まれた卑怯かつストレス障害にも繋がるのではないか、と思える杭の数々に尻込みしながらプレイしていたのを思い出す。
理紗の心では罪に関するいわれなき飽くなき探求心みたいなものがあふれ出ていた。
そこで、彼女は聖書を通読してみることにしたが創世記19章で躓いた。
天使を引き連れてロトがソドムにきたときには、街は堕落しきっていた。
人々は荒み、淫乱であった。
性交はやり切ってしまったのであろうか、そこには女の姿はどこにもなく、男色の町と化していた。
性器同士の結合をしない性行為に明け暮れる日々の中で見つけたささやかなロトというたいそう整った美男子に彼ら総出で犯そうとする。
また、彼らは目が見えなくなっており、手当たり次第にロトはどこか、ロトの天使(天使と聞いて女と思ったがこれ、実は男なのです)はどこか、と聞いて回った。
そんな彼らの姿を見て、神はその街を炎で焼尽することを決意する。
ロトの妻は逃げ行く最中に振り向いてしまい、彼女は塩の柱になってしまった。
大体こんな感じ。
このエピソードには神の御言葉逆らえばどうなるのかが克明にしるされており、堕落した人間、もっと言うと性的な人間には情け容赦ない、そんな姿が描かれている。
この話はストーリーとはあんまり関係が無いというように見受けられ、理紗が罪から逃れるためなら何でもよかったのでは?という気がしてくる。

理紗は己の罪を背負い込み、学君がこういうこと(三沢先輩を殺人sたこと、それにともなう行為)になったことは私の責任なんじゃないかと一旦は思ったが、詠美や学が置かれた癇癪を起してしまう性質を考え込んだ後、世の中には本当に悪い人はいない。みんなそれぞれ置かれた境遇は違えど、罪を背負って生きている。だから、罪に対して抗うのではなく、受け入れていくべきだというようなことを言ってこのゲームは幕を閉じた。
感想
Scenario 3でこれまで以上に面白みが出てきて、クリックする手が止まらなかった。
しかし翌日朝が早く、結局Part3まで及んだ。
今作では泉と理紗の2人が攻略対象となっている。
どちらも歪な関係で今にも崩れ去ってしまいそうなのだが応援したくなる。
三沢先輩を殺害したのは自分だと分かった上で逃避をするのと、本当の真実を知らずにすべてを武のせいにして自分は安全圏にいるという泉Endのどちらが良いのだろう。
真実を知ることが当事者のために必ずしも必要なとこでないことを念頭に置いておくにしても、殺害を「必要でないこと」とするのはちょっと違うと思った。
現在の倫理観や価値観ではちゃんと償うのが正しいやり方であって、こういうやり方というのは逃避にしかならないがエロゲにそういうのを
求めるのもまた「ちょっと違う」んだろうけど。
根本的に理紗と泉さんは幸せに対する感じたかが、対照的だと思った。
一歩では享楽的そして、親からの自立を目指しつつこれからの道を歩み、他方では、幸福とは、ロバにつるされたエサのようには幸せには到底たどり着けない。だからこそ、人は幸せを追い求めて、またくじかれて、別の幸せに向かって邁進している。
理紗の葛藤や深層心理をよく表現していて引き込まれました。
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