美桜のクラブ通いを何とか引き留めようとする大智だったが、その行為は姉のクラブに行きたいという思いをより一層強くしているようすであった。
今日は愛もクラブに寄っていくというから、いつまでも避けているわけにはいかないので、一大事になる前に対策を練る必要がある。
すなわち大智もついていってみることにした.……。
しかしそんな大智の目に飛び込んできた瑛の痴態。
もう誰を、何を信じていいのやら分からなくなっていき、現実遊離感がしてくらくらしてくる。
お香が焚かれたせいでもあるに違いない。

紗栄子は、他のクラブ会員やクラスメートを下に見る傾向強く、また人を瞬時に度し難いかそうでないかの区別がつくという高いIQの持ち主のようだ。
求められる時には女を演じきってみせた。
女を演じるというのは瑛も同じこと。
彼は、どうやら女装という性的嗜好か、あるいは、外見的には男(女性にも見える)だが、女になりたいということなのだろうか。
いずれにせよ、現実世界の男として求めれている自分に飽き飽きしている様子。
私の邪魔にならなければ好きにしてくれてもいいし、邪魔をしてくるなら同じクラブのメンバーでも容赦はしないつもりだった。もし、私にも小野田さんにと同じように、いや、それ以上の手際で戸田さんを救うことができたら?それはいまの「退屈」を払拭してくれるかもしれない、という考えが内心に湧きあがってくる。小野田さんがしたように、誰かの人生を大きく揺り動かして、「支配」して、影響を与えることができたとしたら……
紗栄子がこのクラブに入り浸っているわけは偏に退屈な気分だろう。
その退屈な気分をなかったことにするのなら、どんなことにも加担するという決意の表れなのだろう。

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