最初は、このゲームをするに至って、淡々とした日常を描いた話かなと思った。
しかし、誰かが亡くなったり、身体に障害が残ったという人生に焦点を置いた話。
だが、3人の関係は萩原 睦月の母親が起こした交通事故によって変貌する。
その事故が発生するまでの3人の関係はどっちつかずのじれったい関係であり、沙耶と沙希どちらがヒロの心を射止めるのか分からなかった。
ヒロの方はどっちも同じくらい好きだったのだろうが、やはり、どちらともくっつけずにいた。
3人で同じ帰路に着く。
そんなとき、部活で一緒には帰ることのできない沙希をよそに沙耶と帰ることになり、徐々に意識し始めるヒロ。
晴れて恋人同士になれた沙耶とヒロ。
ここまで来るまで長く、正直このままのぺースで物語が続くならば、このゲームの終着点は見えてこないという感じがした。
2人だけの楽しく、これは夢なのではないかと思えるくらいの「君と出逢った奇跡がこの胸」に広がっていくという「日常」は瞬く間に終わってしまう。
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事故死……。
沙希
沙耶を終わった後に出現した美幸、雛とはるかの個別ルートをプレイした後で現れてくるキャラクター。
沙耶と双子の妹である沙希は姉と瓜二つであるが、性格は全く違う。沙耶はおっとりとしていて、一方の沙希は負けん気が強く、言葉も少々キツイ。だが、それも、ヒロに揶揄われての話だから本当は同じような性格なのかも。
沙希は、現実を見ることがなく、妄想の中で沙耶と会っているヒロに対して、その身勝手な妄想を止めて頂戴、と糾弾する。
それから2年という月日が経った。
ヒロの様子は、あの頃と打って変わって、仲間たちとの交流を復活し多様である。
沙希とも相変わらず、くっつくのか離れるのか分からない。
しかもヒロは、沙耶の姿を沙希に投影しているのか。
アンタに何が分かるのよ!
と涙すら流さず、感情が湧かないヒロに対していった言葉が印象深かった。
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そんな投影をしているかのように見え、悩んでいヒロに、同じハカランダでバイトしているゆかさんの助言で、沙耶の事も大事にしていたし、沙希の事も大事にしたい。そして今を生きているのは沙希なのだから、沙希を大事にする、という自分の気持ちに気が付いたヒロの、感情の移り変わりには、同情いたしかねた。
だが、その後の沙耶が言っていた
沙希ちゃん、幸せになってね
の言葉にはすべての感情を覆い尽くすほどの隆起があった。
(ここ、酒が入っている状態で書き綴ったので何を書いているのか分かりませんが、一言で書くと「感動した」ということです)
自分の命が風前の灯火と知ったときには子孫や血の繋がりのある者が幸せになることを願う。それが、一番大事だわな……。
美幸
美幸と正人の恋物語。
美幸の父親が彼女の母親が死ぬときに、交通事故を起こしたのではないか、という疑念。
その疑念が誤解へと移ろい行く。
美幸の誤解であり、実は事故を起こす原因となったのは、彼女自身。
彼女は、母が亡くなってから父親とともに一旦、乗用車を使い帰宅することになった。そこであのアクシデントが起こる。母が遺したペンダントが道路に落ちていることに気が付いて、車を降りてペンダントの方向に駆け出していく。そこに剣道の試合を観に行きたかったであろう睦月の母親の運転する車と接触しかけてしまい、車はそのまま、電柱かどこかに容突してしまい、運転していた女性、たまたまそこに居た沙耶をも巻き込む大惨事となった。
辛くても笑いなさい。笑っていればいつかは良い事もきっとあるわよ
そう、母に励まされたことを思い出す。
afterエンドでの、沙耶と睦月の母親の命を奪った張本人ではないが、その原因を作ったのが彼女だと知ったときに陥る正人の心の葛藤が描かれていて、共感した。
正人は、嘉邦が勤務している中央病院で見習い医師として勤務する姿が、美幸は、その病院で看護師として勤務している姿が描かれる。
無事に雛の、事故の後遺症で視力を失った眼を治すことができるように。
雛
雛と京次の恋物語。
雛は正人の妹であり、口は悪いがそれなりに仲が良い。
京次は雛のことを、彼の住む世界に咲く一輪の花のように大切にすることをモットーに生きており、過去には、雛が虐められて、人形を取られてしまった時に救った。所謂、持ちつ持たれつの関係を言い表しているのではないか。
これを直接的に書いている描写は無いが、そう思っている節は随所に現れている。
その自由気ままに送っていた生活も、沙耶が亡くなる事故をきっかけにして、雛の視力を失うという事件が起きてからは驚くほどに、簡単に崩落する。
しかし、鬱ゲーとは違い、ちゃんと向き合っていくことで、人間本来が持つ困難に抗う力というものが抜きんでてきた√ではあった。
鬱ゲーにありがちな、この後に再び災厄……。
例えば、火事になるとか、交通事故で京次が死んでしまったりという不可避な物事が起き無けりゃいいが……。
それならいっそのこと、亡くなってしまった方が良かったのではないか。
生き残ってしまったゆえの苦しみや葛藤、抑うつ気分を上手く表現した話。
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afterエンドでは、子供が妊娠して一姫二太郎とも言うべき円満な家庭を創り上げていくことを目的に過ごしていくことが語られる。
また、名前はつむぎ。
親から子へと代々紡がれることを由来とする名前とのこと。
死ぬべきだったのに、という旨を吐露する場面もあったし、視力を失うことによって一時はすべてを諦めそうになりながらも、他人と協力し生きていくことを選択した雛。その選択をなかったことにはしたくない、という意志が痛いほどに分かってきて、素直に脱帽した。
はるな
はるなと睦月の愛情物語。
親子にも似た姉妹の関係。
2人には血は繋がっておらず、ただ単に分かりやすく比喩したものだと思われた。
だが、比喩でも何でもなく、疑似の家族から本物の家族に変わる。
睦月は、女性としてはるなを愛し
はるなは、弟として睦月を愛していた。
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afterでは、仲睦まじく終わる姿が描かれた。
罪の呵責に囚われてしまう睦月だが、そこに一種の救世主であるはるなが現れてくる。
睦月の母親は、事故を起こした挙句、亡くなってしまった。彼女の教え子であるはるかは
- 彼女に睦月という息子がいること
- 剣道をしていること
を知った。そしてはるなは、彼女が生前に言っていた
むっちょんを守ってあげてね
を胸に前に進んでいく。
この話からは、変化を恐れずに前に進んで行けというメッセージを受け取った。
≪感想≫
それぞれの人にはそれぞれの考え方があり、サイコパス的な考えをする人もいれば、奴隷のような生き方に沿った考え方をする人もいる。
また、他人がやるように右に倣えという考えもする人もいる。
という様に、我らの世界は実に幅広く、また非情にできている。
また、今のような過酷な現状に打ちひしがれてしまったときに、Asterという作品をプレイすると、人の振舞い方の指標にもなるのではないかと思った。少なくとも、私にはそう感じた。
Aster(追憶)では、沙耶が亡くなるまでの短い猶予時間の中、沙希に思いを託すシーンで感動した。
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この3人が集まって流星群を見上げているシーンの意味を考えたときに沙耶が亡くなってしまったことにより3人で流星群を見るという約束は、叶わない夢となってしまった。だが、ヒロが明日を見られるようになったことで、心の中でいつでも見れるようになったということなのだろう、と私は解釈した。
夫婦漫才のようなカナと伸二朗のその後について触れられていると尚良し!


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