一緒にこの町で永住しよう?と祥子に問われたが、この時ばかりは少し、冷静に踏みとどまる必要があった。
まずは情に流されずに情報を整理しよう、と考え返事はいったん保留に。
その決断に喜ぶ人と悲しむ人の2通りがいた。
どうやら、彼女らはいまの現状に満足しており、諒人と未羽自身も永生したい気持ちはあったにせよ、奇妙なわだかまりがあって、なかなか踏み出せない。おまけに、男性嫌いの証拠の性格も手伝って、初めは男もいたようだが、徐々に今のような姿に変貌したようだった。その男嫌いの性格もおそらく過去に付けられた嫌味な一言が影響しているのだろう。
折口は昔、親の仲が悪く、いつも口喧嘩が絶えない環境だった。いつしかそれは、兄弟愛を超えた「何か」に置き換わってしまった。糟糠の妻とは言わんが、苦労を共にしてきた兄弟だからこそ通じるものがあるんだと思った。
制約があってこそ、日々の生活には彩りが添えられるの
の文音の言葉にはこの制約のある生活も悪くは無いでしょうということなのではないか。
苦しみの中にもわずかな幸せもある。大半は苦しみだが、そのうえでその苦しみを享受しようとしている気がする。
祥子のお母さんは病床に臥せっているのだというが、別に死んでいるわけではないよね?
確か、かつてした腐果の濡獄というエログロの主人公の母親も実は…という展開であったのでついつい深読みしてしまう。冒頭であった血腥い事件がもしかして祥子が母親を殺害し、そのショックから時間を止めたという精神的にまだ未成熟のまま成長していくという物語だったりとかして…(多分違う)。

ただ私は、こういう世界に住み続ける選択肢もありかなと思うけれども、祥子の豪邸にある一室(部屋の外から心張棒を付けられており、中からは出られなくなっていた)からうめき声が聞こえたとかでやはりその世界に住み続けることは、何らかのリスクがあるんじゃないかと思ってしまう。メイド長としての文音と寮母としてのみさき。2人の権力争いが水面下で繰り広げられているのか?辛い現実から逃がしてくれる素晴らしき世界になじんできた文音にとって、みさきの存在は脅威になる。そこで彼女は条件付きの優しさで注意したのだろうか。

道しるべといい、川に水浴びに行ったときに足を掴まれたという河童のこともあり、祥子にとって都合の良い事が多すぎる。それは祥子の停滞した心を表しているのではないかと思った。
そして祥子によりエデンは作られたという証拠になる。実際、祥子が涙する場面ではエデンに初めての驟雨がもたらされた。
物事には二者択一。どちらかを選ばなければいけないのであり、それは同時に、一方を選んだらもう一方は捨てなければならぬこと。
今までしてきたエロゲでもそれは言えることだが、時間を「あの頃」のように留まり続けたいと考え、エデンを創り出した祥子ともうあの頃には戻れないと諭すみさきや諒人の別離のシーンは心に来るものがある。

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