前々から気になっていた2005年に「Black Cyc」より発売された夢幻廻廊をプレイしました。
このゲームはseesaaブログをやっていた時に「ある人」からオススメされたエロゲなので期待度は高いのです。
そういえば、Black cycのゲームで遊んだのは、『SaDistic BlooD』以来だった。

プレイ時間:19時間
オープニングテーマ「トキのかたりべ」
エンディングテーマ「夢幻廻廊」
一言感想:マゾゲーと聞いたので、てっきり女性が調教されるゲームかと思えば、どうやら屋敷にまぎれ込んだが最後、調教されていくゲームなので、意表につかれた。
屋敷にかとるとして「たろ」が置かれることになったが、そこに至るまでの経緯や周回を重ねるごとに心理状況も含めて楽しめた。
この「たろ」という少年はどうも弱弱しい男であり、自分が悪いことをしていなくても誤ってしまうことや、態度などでも洗脳されやすそうな人だという印象。
ストーリー
少年が記憶を失った状態で目をさますと、妖艶な美女が目の前にいた。
彼を拾ったことを美女から告げられると、少年は天涯孤独だったことを思い出して涙を浮かべた。
少年が美女の元に身を寄せたいことを告げると、美女は微笑み、「かとる」としてこの屋敷におくと答えた。
たろと呼ばれたその少年はこの日から、虐げられる快楽を味わうことになった。
キャラクター
皆さん、癖が強いw
たろ
森藍子本作の主人公である、記憶喪失の中性的な容姿の少年。
道端で倒れていたところを九条家に拾われ、かとるとして九条家に暮らすようになった。
人間の尊厳を破壊するような「いっぷ」を受け続け変わっていく。
九条 環
館の女主人。
温厚さと妖艶さを持ち合わせた人物で、たろと九条四姉妹との現在の関係を作り出している。
九条薫子
九条家長女である、長髪の少女。
病に臥せっており、部屋を出ることはめったになく、それがゆえに世間知らずなところがある。
のんびりとした見た目に反して苛烈ないっぷが多い。
なお、病弱な体質は先天性のものではなく、人為的なものが起因している。
九条麗華
九条家次女で、長女とは対照的に髪型はショートカットである。
武術を体得しており、気が強く暴力的な一面がある。
九条祐美子
九条家三女。優しい性格で、ペットの世話をすることが多い。
但しその優しさの裏には凄惨な事情を抱えている。
たろのことを動物として認識している。
九条奈菜香
九条家末子。幼く無邪気だが、それがゆえに残酷なことも平気でする。
麻耶
九条家のメイド。冷徹な性格をしており、たろに対して厳しく接することが多い。
志乃
九条家のメイド。気弱で不器用。
常に「次失敗したら家畜に格下げする」と脅されており、そのせいかたろに同情することもある。
しかし、其の心の奥には異常な本性が潜んでいる。
グモルク
犬の被り物のみを身にまとった人間。
感想
赤と黒があるみたい(?)
小説のスタンダール著『赤と黒』を思い出してしまった。ジュリアンとレナール夫人。一度は恋人同士になれたというのに時代と環境のせいか、二人の距離はバラバラになる。だが、最期の最期までジュリアンはレナール夫人を愛し続けていた。
皆それぞれ、与えられた「役割」を演じているにすぎない。その役割は幾度となく時間がループしても変わらない不変的なものである。
コップは溶液を容れておく器であるかのように。
というメッセージと受け取ることができた。
例えば、環は神様である。主人公を「たろ」と名付けて拾い、かとるとしてのしつけを四姉妹に頼む。メイドは元々、かとるだった。「たろ」が来たことで、かとるからメイドになったようだ。罪悪感に苛まれたメイド。だから犬の帰巣本能のように屋敷に帰ってくる「たろ」に怒りの刃を手向けるシーンがあったわけか。
人間の尊厳もなく、家畜として扱われた(若しかしたら本当にそう見えていたのかも?)屋敷の方が、他人に無関心でいる社会より、よっぽど健全である。そこには、かとるとしての役割があり、お嬢様も構ってくれるから。
そして、最後では環の孤独を癒していくという人間の存在意義について考えさせられた。
赤の日
第一段階
薫子は、長女であんまり外出はしないらしく友人がいないという。だから人との距離感が掴めず、必要以上に「たろ」の行動を把握しようとする。それゆえ、独占欲が人一倍強い。
お嬢様たちが料理をするシーンでジャイアンシチューを思い出して笑ってしまったw
だが、そのシーンで包丁を手に刺して流血する薫子のシーンもあった。
必要以上に「たろ」の行動に固執する理由も分かり、その上で薫子の行動を取った意味も理解できた。会者定離、愛別離苦の考えだなぁ……。
第二段階
続く二段階目では麗華と祐美子。
まずは次女の麗華。
ドS、どちらかというと気が強い。
こういう娘を堕として、陵辱していくというのも一興である、というようなことをどこかの誰かも言っていましたしね……(螺旋回廊のEDENの連中)。
そういう欲望は胸の内では誰しもが持っているはず。
取り付く島もないほどに接してくる麗華。一番まともである。まともであるがゆえにその屋敷の中での常識に染まりつつまる「たろ」には厳しく接していたのか。
だが、彼女はこの館についての秘密を知っているかのような口ぶりで、一生このままでいいのか、と「たろ」に問いただす。
有耶無耶にしか答えることができなかった「たろ」。うすうす気が付いていたようではあったが、正直、帰ったとしてもまた、灰色で誰からも相手にされない(過去にはいじめられていたと述懐するシーンあり)日々が始まるのだと思うと、この館に留まりたいと思うのは必然。
その思いを麗華は一緒に館から逃げ去ることで払拭した。
私といればそんな思いもしなくて済むという心の声が聞こえた気がした。
アスタ マニャーナ(また明日)
だが、次のシーンではなぜかまた灰色の風景。
祐美子は、「たろ」をかわいい「ペット」(というか家畜…w)として扱っている描写があった。躾を極端に嫌う性格。良く言えば平和主義。悪く言えば事なかれ主義…?
その性格が災いして、環に少々叱られることになった。そしてその様子を盗み聞きしていた「たろ」。普通は気が付かない、盗み聞きしている「たろ」元に来たり、志乃がお茶を運んで来たらそのタイミングを知っていたかのような発言をする等、伏線もあって楽しめた。
あの屋敷にいるものはすべて、環の拘束から逃れられない。
一旦はその拘束から逃れた二人だが、また戻っていく。それはまるで、終わることのない螺旋のように。
ただ、このルートの志乃さんは性格、悪くない?非正規社員は正規社員に愛想を振りまくが、同じ非正規社員には愛想すら見せないのと同じだな。
同じ種類のもの同士とでしか争いが起きないのと同じく、この場合の志乃さんは「たろ」を家畜として扱っている。
だが、うわべだけ同じ人として接する祐美子とどちらが本人にとって最良なんだろうと考えてしまった。
また祐美子は環の言う取りに服従をする。
それでどうも会話が嚙み合わなかったわけだよね。
第三段階
四女の奈菜香。
人よりも独占欲は強いと感じた。そして、幼さが故の残虐性もある。
まぁ、残虐性と言っても四姉妹の中では下方だろうか。 その残虐性が明るみに出るのは第4段階目以降。
祐美子とは「たろ」を奪い合っている描写もあり、それぞれ思惑はあろうとも、それを邪魔する気にはならないし、お互いに邪魔しないで行けたらいいのにと思った。
Hシーンではプロレス技をかけると見せかけて、性器を「たろ」の背中に擦りつけて達するシーンが一番萌えた。
子供とお姉さまから言われるけれども、そこにはちゃんと大人の女性が内在しており、大人になりたいという思春期にありがちなことを明してくれた。
そして、もうここにはいてはだめと彼女は言い、言うことが聞けないのなら、殴ってでも言うことを聞かすと、まるでダメ犬を躾けるような行動を取ってきた。
第四段階以降(黒をメインに)
このあたりで、もうすっかり、犬と化している「たろ」の姿があった。
イヌミミをつけさせられたが、瞬簡接着剤で塗り固められていたり、食事のシーンでは犬用の餌台で食事を摂る。また環に首輪をはめさせられたが、そのことは
この場所に僕が存在する理由。存在してもいいい理由
と自分で自分を納得させる描写があり、存在することになんて理由なんてあるか?と思いつつプレイしていた。
ここから、「黒」となる日もある。
黒の日では、グモルクとも意思疎通ができるようになる。だがそれは、獣へまた一歩近づいた証明でもある。
またこの屋敷は、箱庭のような場所だと思った。というのは、「XX日目」で屋敷の庭を掃除していたら、いつもとは違う出口があったからだ。出口というよりかは見えない扉であり、扉を開けると、向こうにはビールを片手にへべれけになっている大人たちの姿があり、それこそが本当の出口。今までの出口は無限ループへの入り口にしかならなかったと考えると誰かに頭を殴打され、記憶が途切れてしまったのも肯ける。

怖い…
志乃は屋敷に変われている「かとる」の牝牛、さぞかしホルスタインともいうべき存在だが、わりと巧く立ち回っている(洗脳されている)たろとは違い、いつも失敗ばかりで理屈っぽいところがあり素直ではないと環は言う。
志乃の過去は、借金の肩代わりをする羽目になった。
逃げ出した志乃と「たろ」は、再び元居る屋敷に戻っていく。
いつも失敗ばかりだが、
- 失敗する
- 厳しい躾け
- その躾を見たもう一人のメイドに間接的に教える
という役目を担っており、あえてそう演じてこないといけなかったと考えると、礎にも思えた。
千と千尋の神隠しみたく、この屋敷を出られたら「たろ」の本当の名前を教えてやると言った麻耶は、「たろ」が何度も何度も屋敷の外に出したのに、いずれの場合も帰巣してくる。そういう現状を目の当たりにしてか、「たろ」の目が覚めると同時に殺すという手段を講じた。
死ななきゃ辿り着けない天国なんて、この世じゃなんの価値もない。
ねえ君は、君は、何を望むの?
結局あれほど逃げ出したいと思っていた屋敷に戻る「たろ」。
その心は恐らく、外界にいるときの景色は灰色であり、周りの人からはなにもされない代わりに孤独に飢えていた。だが、屋敷では人として扱ってくれなくても、曲がりなりにも「世話」をしてくれる。どっちを篩にかけたとき「たろ」は後者を選び取った。
君はどう?死んだ後の世界に意味を見出すのか?
という風に解釈をした。

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